HAWAII
彼女の絵を初めて見たのがいつだったのか正確には忘れてしまいましたが、どこでその絵を見たかは覚えています。私が彼女の絵を最初に見た場所はカパルアベイホテルのロビーでした。木製のルーバーが大きく開け放たれたそのロビーには通り抜ける乾いた風と南の島の強い太陽の光がルーバーの隙間から足元を照らしていました。
子供たちはまだ幼くトランジットと長旅の疲れでそのままロビーのソファで眠り込んでいました。絵はロビーにあるという表現は好ましくないかもしれません。その絵はチェックインのカウンターの後ろの壁一面に嵌め込まれように広がり、まるで建物の一部のようだったからです。絵には少し浅黒い肌の南国の女性が猫を愛でながら優しい瞳で私達を見ていました。彼女の絵は敢えて平面的に単純な色調で描くことで、女性の生命力と島の自然美を強調しています。
その後そのホテルは解体されましたが、彼女の絵を見る機会はぐっと増えました。ホノルル空港のターミナルにもハワイを代表する絵として展示されているとも聞きます。また彼女のギャラリーがチャイナタウンの近くにあると聞いたので探しに出掛けたことあります。定休日だったのか仔細は分かりませんが見つからずに帰ってきました。
そんなこんなで数年が経った時、偶然マウイ島のギャラリーで彼女の絵を見つけました。もちろんベイホテルで見たころに比べとおそらく随分と値段も高くなっていましたが、この機会を逃したらない次はないと清水の舞台のつもりで2点を購入してきたのです。
その一つがこの絵です。ベイホテル同様、女性と猫がモチーフです。このところ彼女は一枚のキャンバスに描くのではなく、こうして分割して一枚の絵として作品にする傾向があるようです。この絵を見ていると初めて彼女の絵を見たカパルアベイホテルが蘇ります。ホテルは無くなりましたがあの乾いた風と光は今も健在なはずです。