Kapalua 安井かずみさん

109月2013

Kapalua 安井かずみさん

「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし」

 

方丈記の冒頭のこの一節をこの頃意識するようになりました。多くの事が身の周りで起こりそして過ぎ去って行く。去年までの事がずっと昔のことのように思えることがあります。娘が駅から電話を掛けてきて、妻が迎えに行き、玄関から二階に駆け上がる娘の足音もずっと昔のことのようです。犬たちも歳を取りました。一匹は寝てばかりで、もう一匹もソファにあがるのがやっとです。

人生というのは不可逆的なのだと思います。ああすればよかった、こうすればよかったと思っても二度と同じことは出来ないのです。
今年の夏休みは鎌倉で長逗留していました。しかしながら、一年前とは明らかに違うのです。どう表現すれば良いのか分かりませんが、同じ景色でも見える景色の色が違うというようなそんな感じです。そして出会いと別れを繰り返して人は一生を終えるのでしょうね。
夏休みに安井かずみさんについてのエッセイを読みました。色々な人が彼女について語っています。
はっきり言って、今は読んだことを後悔しています。あれほど当時まぶしかった人にもこんな苦悩や葛藤があったのかと知ったとき、知らなければよかったという気持ちになりました。私は一度だけ彼女を飯倉近くで実際に見たことがありました。まるで女王のような豪華さで周りの人より一際輝いていた事を思い出します。
それから数十年たって私たちも彼女の好きだった、カパルアに行くようになりました。実は彼女がカパルアに家を持っていたことを知らなかったのです。最初それを知ったとき、「あれっ」という感じでした。そう、彼女の華やかさと、カパルアの何にもないそしてどこまでも落ち着いた深い青の海がイメージ出来なかったからです。
でも今は少し分かる気がします。きっと、彼女も一人の人間だったのでしょう。
次にカパルアに行った時に私の目にはあの南洋松と深いブルーの海がどんな気持ちにさせてくれるのでしょう。


every moment is unique